あらまほしき学者の研究 05/1/14
野口隆著『モース社会学の研究』『古代日本人の思考様式』
雑文としか言いようのない代物が、有名国立大学の助教授だか教授だかの肩書で出版されています。それだけならまだしも、さもすぐれた研究論文であるかのように、新聞全紙がこぞって紹介!!!!! 知的劣化がおそろしい勢いで進行中ですが、学者の研究はかくあるべしとの思いをこめて、次の2書をご紹介します。
いずれも蓄積された研究成果をもとに展開された精緻な論考をまとめたものですが、非常に専門的でありながら、素人が読んでも抵抗なく読める平易な書き方がなされています。しかもとことん論理的に考察された理論が共通に備えもつ、普遍的な思考の型が提示されており、今という時代を考える原理的な指針を読み取るヒントが満載です。
「モース社会学の研究」はより普遍的、より原理的な思考の方法を提示し、「古代日本人の思考様式」は日本という「特殊性」の虚実を考察しています。いずれも擬似「古代社会」ないしは「古代社会」を対象にしていますが、おどろくほど現代にダイレクトにつながる問題が提示されています。賛成するにしろ、反論するにしろ、我々現代人の思考を刺激せずにはいないはずです。
著者の野口隆氏は、元広島大学教授。1912年生まれのご高齢ですが、昨年、随筆集を出版なされ、ご健在です。現在は出身地の佐賀県神崎町に在住。
なお同種のすぐれた研究書は他にもございますが、現在在庫切れにて、今回は本書のみのご紹介です。
● 昨今、いびつな形で言論界主導によって強行されつつある反近代化路線の一つとして、古代回帰がありますが、古代に限らず、単純な過去への回帰、単純な過去の模倣は百害あって一利なしです。古代社会がどのように形成され、変遷してきたのかを理論的に考察するということは、単純な回帰や模倣へのもっとも有効な批判の根拠を提供しているはずです。言わずもがなの一言ですが、念のため。
(久本福子記)
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