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永遠の維新者 
06/2/11↓ 
2/12↓  2/17

昭和56(1981)年刊/四六判・288頁/1800円+税
既刊本<思想・評論>コーナー 永遠の維新者(2/17)

本書は、単なる西郷隆盛の評伝ではなく、西郷隆盛を媒介にして論じられた政治哲学であり、日本論であり、天皇論であり、現在の日本を逆照射する、特異な鏡のような働きをもっています。刊行は今から25年も前になる古い本ですが、本書を読むと西郷隆盛は単に過去の偉人ではなく、今現在こそ、われわれの前に現前せらるべき希有な政治家であることが、著者葦津氏の静かな熱情とともに伝わってきます。

本書を刊行した久本三多は、著者の葦津氏に深く傾倒し、葦津氏のための雑誌を刊行したいとまで口にしておりました。誌名まで考えていましたが、実現せぬままに終わってしまいました。当時わたしは、三多がなぜこれほど反時代的な思想家に傾倒するのかは、よくは理解できぬというのが正直なところでした。当時のわたしは、当時の常識的な「右翼」観に縛られたままで、三多の熱意にもかかわらず、偏見から本書を読んでおりませんでした。

しかしその後のわたし個人のさまざまな体験や、時代の激変を経験する中で、本書は、読まずとも今こそ時代が求めている思想書であると直感し、2、3年前に倉庫で発見してすぐに社内に移し、注文があればすぐにも出せる準備だけはかなり前から整えていました。積極的にご紹介せずにいたのは、本の外装の痛みがあり、このままでは特別の読者にしか売れないのではないかと思われたからです。しかし葦レポート19号でもとりあげていますように、皇室典範改正問題が焦眉の問題となっていることもあり、本書をご紹介することにいたしました。

表紙やカバーにキズや凹みなどもありますが、定価どおりの販売とさせていただきます。中はまったく新品然としていますし、それ以上に二つとない貴重な書物だと考えているからです。ご紹介するに当って、多事多難に襲われつづけている中ではありますが、本書を初めて読み、冒頭書きましたような読後感を驚嘆とともに抱くに至りました。本書を読んで、三多の時代との交差の仕方には、20年ぐらいのズレがあったとあらためて思わざるをえません。いうまでもなく、早すぎたということです。 

著者の葦津珍彦(あしづ・うずひこ)氏はすでに故人となられていますが、葦レポート19号の2/6付「(3) なぜ、皇室典範改正を急ぐのか」でご紹介しました「アジアと日本のこころ 頭山満生誕150年祭」の演題にもその名があがっています。講師の田尾憲男氏は初めて目にするお名前なので、どのような方かは存じあげませんが、葦津珍彦、頭山満はともに「永遠の維新者」たらんとした思想において共通していますがゆえに、名前が並んでいるものと思われます。

「永遠の維新者」とは、いうまでもなく、俗利、功名を嫌悪して排し、国のあるべき姿を永遠に求めつづけた、西郷隆盛の思想を端的に表現したものです。時代を憂え、日本の現在に絶望している方々にはもとより、政治家や官僚や企業家のみなさんにも読んでいただきたい一書です。在庫に限りあり。なお本書の装丁は、今は亡き画家の働正氏です。(06/2/11 久本福子)

●警告!!!!!2/12 昨日、上記のような文章を掲載しましたが、昨夜帰って読売新聞を開いたとことろ、「中央公論」3月号の広告が目に入り、急遽「警告」を発することにいたしました。頭山生誕150年祭の講師の一人である松本健一氏の「女系天皇容認の秋(とき)」と題する評論が同誌に掲載されていたからです。中味は読んでおりませんが、タイトルから推測できる内容においてはもとより、掲載のタイミングからしても、小泉政権が今国会での成立を強行しようとしていた、皇室典範改正を後押しするものであるのは明らかです。

実は2/6の本レポート「(3)なぜ、皇室典範改正をいそぐのか」を、書こうととしていた時に、頭山満生誕150年祭」の案内メールが届きました。講師の松本健一氏の名前を見て、当サイトで紹介すべきか否かかなり迷いました。松本氏の書かれたものはほとんど読んだことはないので、松本氏を取り巻く状況からの判断で躊躇していたわけです。しかしこの誕生祭開催の発起人や賛同者の名前をくり返し確認して、紹介することに決め、リンクを貼りました。非常に沢山の名前が並んでいて、しかもほとんどが初めて目にするお名前ばかりです。名前だけでは判断はできませんでしたが、その肩書から、軽々しい催物ではないと判断し、ご紹介することに決めた次第です。

しかし、「中央公論」に掲載された松本氏の評論は、北一輝の研究家であるらしい松本氏とどうつながるのか、さらには頭山満をも論じようとする松本氏とどうつながるのか、推測は非常に困難です。「中央公論」を読めば、松本氏の仕事と女系容認発言とが有機的につながるべく説得的に論じられているのかどうか、読む暇はないので多分読まないとは思いますが、非常に疑問を感じます。頭山の名前を冠して開かれるというので賛同した方々の中には、タイミングを合わせて発表された松本氏の女系容認推進論には、裏切られたと感じる人もあるかもしれません。

以上のような懸念により、頭山満生誕150年祭に貼ったリンクはすべてはずします。ただし、一つの考えに固執するのではなく、いろんな考えを聞くのは悪いことではありませんので、参加は大いに意義はあるとは思いますが、興味のある方は、ご自身で検索してください。

なお、2/6に「(3)なぜ、皇室典範改正をいそぐのか」を掲載した翌日、紀子様ご懐妊の報があり、正直びっくりしました。その後、政府もこの問題では慎重姿勢に転換したようです。国民に考える余裕も与えずに、強行しようとしていたこと自体に非常な抵抗を感じていましたので、まずは妥当な判断だろうと思います。皇室問題に関する有識者会議のメンバーは、どのような人物なのかは知らない方も含まれていますが、われわれ一般国民にはない見識と知識の持ち主が選ばれているものと思います。しかし、天皇制や皇室制度についての専門家がいるようにも思われません。これも不可解です。(06/2/12 久本福子)

 

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