葦書房

武を考へる

2012/3/22

「武は暴力を制御するもの。」

1990年8月刊/四六版/272頁/1845円+税

 「武は愛の制御によって人類の自然に秩序を与へ、歴史を正すものである。つまり、文化への決断に他ならなかった。」(「あとがき」より)

イランや北朝鮮の核開発が話題になっていますが、真の脅威はむしろ別のところにあるのではないかと思われます。本書所収の論考は20数年前に書かれたものばかりですが、現在の真の危機を読み説くヒントが満載されています。「核時代の東洋兵学」で著者は、ウツリョウシや孫子などの中国の兵家や、クラウゼヴィッツの「戦争論」を紹介しながら、核時代の真の脅威とは、実際に核兵器が使われるか否かにあるのではなく、時の政府が政治と戦争を短絡的に結び付ける愚を犯さずに、政治的に軍事(武)について考え抜く思想的な力を有しているか否かにあると鋭く指摘しています。政治的に軍事を考え抜く思想的営為こそがシビリアンコントロールの本義だという、目からウロコの鋭い指摘もなされています。日本ではシビリアンコントロールといえば、政治家が自衛隊を管理することであると単純至極に考えられていますが、この誤解は、防衛大学校を除けば、日本には軍事を研究する大学の専門学部や研究機関が公私いずれにおいても一つも存在しないという、政治的にも思想的にも実践的にも非常に無防備な状態を固定化しつづけてきたほどに強固なものになっています。この無防備さに対する恐怖は、戦後も67年も経った今になってかえって強くなっています。

著者の神谷俊司氏は神道家であり、林桜園研究家。数年ぶり、久々にお宝本を蔵出ししました。(久本福子記)

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