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葦の葉通信

 

葦書房

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葦の葉通信

 

142016/3/16

1遺体が語る真実

2サイバーセキュリティ

 

13号 2016/2/27

1北朝鮮の核実験と日本

2北朝鮮のミサイル

 

黄金のアフガニスタン展

12  2016/1/26

日韓合意の不可逆性

 

謹賀新年

11号 2015/12/26

年末の外相訪韓

 

10号 2015/11/30

1 イスラム教とカリフ

2 中韓の相似と相違

 

 9号 2015/10/24

ノーベル賞と世界大学ランキング

ユネスコの存在意義

朝貢外交の今昔

 

 8号 15/9/22

1 広開土王碑文

2 縄文土器と埴輪

3 タイ爆破事件の深層

4 安保法と憲法

 

7号 15/8/30
1 70年談話の意義
2 五輪エンブレム騒動 
 追記 9/1
3 自衛隊肉弾盾作戦

6号 15/7/28

1 深まる韓尊日卑 
2 アジアは広い! 
3 ザハ案採用の謎
4 明治産業革命遺産

 

5号 15/6/15
1安保法案と日本の防衛
2 MARS
韓国と従軍慰安婦

 

4 15/6/3
国防

1 構造改革とIT 
2 TRON
と日本のIT教育
3
プログラミング教育
新安保法案
5
大阪都構想のペテン

 

3 15/4/16
沖縄と福島原発
1百済展と歴史の真相
2高麗は日本をモデルにした
3スタップ細胞捏造事件

2号 15/3/10
1政治とカネ 
2
移民と日本の戦争責任
3
戦場の真実と未来への提言

1号 15/2/5
歴史の纂奪
 ―百済から通信史

サイト移転のお知らせ
15/2/5

 

 

 

吉田調書の真実

原発事故と巨大地震の正体

 

 

 

 

 

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14号 2016/3/16

 

久本福子 YOSHIKO HISAMOTO

 

1遺体が語る真実

 

 東日本大震災、福島原発事故から早5年。5年も経ったとは信じられませんが、復興の遅れも含めて、何かもやっとした思いが拭えぬまま、5年が経ったという気がします。しかし5年経った今もなお、原発事故の真相は明らかにはなっていません。と考える人はわたし以外には皆無だと思われますので、マスコミ等で報道されるレベルでは、原発事故の原因はすでに解明済みだというのが、世間的な共通認識だと思われます。

 

 そうしたマスコミの一つである西日本新聞で、昨年5月から、突如として福島原発事故を検証する「全電源喪失」と題する連載記事がスタートしました。途中で断続を挟みながらも、今年の2月も連載が続いていましたので、この先も続くかも分かりませんが、すでに10カ月近く続という異例の長期連載記事でした。通常こういう記事では、取材した記者などの名前が記載されるものですが、なぜか取材者の名前はありません。

 

 長期に渡る連載記事でしたが、ある一点を除いては、政府事故調、国会事故調唐などの報告書の内容以上のものはありませんでした。というよりも、データ的には各事故調報告書の方がはるかに詳しい。ただ連載記事の最大の特徴は、個人であれ企業であれ、取材した相手の名前が全て記されていたことと、描写が非常に具体的なので臨場感があり、ノンフィクション作品のようであったことです。

 

 各事故調報告書では、東電や政府機関などのトップやそれに準ずる立場の人以外の名前は記されていません。企業名も東電以外の協力企業名などは基本的には伏されていました。わたしはこの連載記事を読みながら、各事故調の報告書が実際に関係者を聴取してまとめられたものであることを改めて確認した次第です。

 

 では、連載記事にのみ書かれていて、各事故調の報告書には書かれていない唯一の例外は何かといえば、4号機のタービン建屋(原子炉と直結した蒸気タービン発電機と非常用発電機や配電盤を設置した重要施設)地下一階で津波に呑まれて死亡した、二人の東電社員に関する記事でした。二人が津波に呑まれて死亡し、事故後2週間以上も経った3月30日に二人の遺体が発見された事はマスコミでも報道され、広く知られた事実です。

 

 ところがこの連載記事では、二つの新事実が書かれていました。一つは、二人の遺体のうち一人は水に浮かんだ状態で発見され、もう一人は、水中ではなく、水面から離れた高い場所で発見されたということ。もう一つは、水中に浮かんでいた遺体は高濃度の放射能に汚染されていたが、高所で発見された遺体は、放射能には汚染されていなかったという、驚愕すべき事実が紹介されていました。

 

 この事実は、水中は高濃度の放射能に汚染されていたが、空中線量はゼロかゼロに近かったということを意味しているわけですが、現実にありうる事態なのでしょうか。記事では、高所の遺体が汚染されていなかったことに対しては特段の論評も、疑問の投げかけもありませんでした。しかし非常に不可解な事態ではないでしょうか。

 

 死亡した二人は、3月11日の地震発生直後、設備点検のために4号機タービン建屋に向かったそうですが、以来30日に遺体が発見されるまで行方不明状態が続いていました。この間、12日に1号機の爆発、14日には3号機爆発、15日には4号機爆発と、原子炉で連続爆発が発生しますが、定期点検で燃料棒が抜き出され、原子炉内がカラッポの4号機での爆発が、3基の中では最大規模の放射線量の放出を記録しています。

 

 マスコミでは全く報じられていませんが、福島原発敷地外の周辺地域の放射能濃度が一気に高まり、汚染範囲が一気に拡大したのは3月15日の4号機の爆発後のことです。1号機と3号機の爆発時には、福島原発敷地外の周辺地域の放射能濃度には、それほど大きな変化は記録されていません。4号機の爆発後初めて、関東方面を含む広範囲な地域で放射能が検出されました。4号機の爆発により放出された放射能濃度はそれほど大規模なものであり、1号機や3号機爆発とは比較にならないほどの高濃度なものでした。これは、被災自治体や大学や研究機関や専門機関で実測で観測された厳然たる事実です。原子炉が空っぽの4号機の爆発後初めて、原発敷地外に大量の放射能が放出されたとは、奇々怪々!

 

 しかしこの重大な事実については、当時の菅政権は完全に隠蔽しつづけました。政府事故調、国会事故調の報告書にも、これらのデータは一切取り上げられておらず、東電が福島原発内で観測した放射線データのみが資料として使われています。政府事故調は、周辺地域への放射能の汚染拡大については、汚染が拡大した後に現実に合わせて創作されたSPEEDIの全く意味のないデータ一を、さも重要な資料のごとく取り上げて論評していますが、これは全く無意味であるばかりか、4号機の爆発後に初めて放射能汚染が原発敷地外にまで拡大したという、不気味な事実を隠蔽する役割すら果たしています。

 

 ちなみにこの4号機の爆発は、3月15日午前6時10分、菅元総理が東電に乗り込み、威嚇演説をぶっていた渦中でのことでした。福島原発では、吉田所長をはじめ全員が、一時仕事の手を止めて、この演説を聞かせられていましたので、4号機の爆発の瞬間を目撃した人は皆無です。いわば突発的に、監視の空白が生まれた時間帯に4号機は爆発しています。3基の爆発のうち、目撃者ゼロは4号機のみです。

 

 二人の遺体は、大爆発を起こした4号機に連結したタービン建屋の地下から発見されました。行方不明になってから19日間、4号機爆発後からすると15日間、二人の遺体はこの建屋の地下に放置されつづけていたことになるわけですが、一人は高濃度の放射能に汚染され、もう一人は汚染はなし。また4号機爆発時には大量の放射性物質が放出されたにもかかわらず、一人の遺体は汚染されていないという。奇々怪々度は増すばかりです。

 

 しかし、西日本新聞のこの連載記事を書かれた匿名の筆者は、この不可解な事実に対しては特段の疑念も感じておられない様子です。わたしからすれば、この素直さは理解不能です。汚染源から遠ざかれば線量は低下するとはいえ、天井も壁もある閉ざされた空間に19日ないしは15日も置かれていた遺体が、仮に放射能濃度の高い水中や水面から離れていたからといって汚染されずにいるでしょうか。捜索に当たった福島原発の作業員たちもかなり、高濃度の被爆を受けていることが連載記事にも書かれています。

 

 ところで、この連載記事でも触れられていましたが、東電は、二人の直接の死因は、多発性外傷による出血性ショック死であると発表しています。多発性外傷とは、体中のいたる所に外傷を受け、その衝撃が内臓にまで及ぶ症状だとのことですが、出血性ショック死とは、体中に受けたその多数の外傷によって、ショック死するほどの出血もあったということです。漢字の意味からも大まかな症状は推測できますが、素人のにわか勉強で解説しておりますが、そう的はずれてはいないはずです。

 

 仮にお二人が津波に呑まれたのであれば、多発性外傷を受ける前に、溺死していたはずです。検死をすれば溺死か否かはすぐ分かるはずですが、溺死ではなく、多発性外傷による出血性ショック死と診断されたということは、溺死する前に出血性ショック死に至るほど、体中に多数の外傷を受けていたことになります。いくら屋内地下とはいえ、津波に襲われて溺死する前に、体中に外傷を受け、ショック死するほどの大量の出血が起こるでしょうか。

 

 地下ですので、津波の海水は上から一気に入ってきます。どういう状況になれば、大量の水を飲みこむ(溺死する)前に、体中に多数の外傷を受け、ショック死するほどの大量出血が起こるのか。素人の頭ではどう考えても想像することすらできません。しかも二人そろって死因は同じです。出血した血液は全て津波が消したのでしょうか。また遺体が爆発による損傷をうけていたのであれば、大爆発は周知の事実であり、東電としては隠す理由もなくその旨の所見も発表しているはずですが、それはありません。ただ東電は、高所で発見された遺体は汚染されていなかったということは、公式には発表していません。東電は合理的な説明のつかない事柄については隠蔽するか、積極的な発表は控えるという姿勢をとってきましたので、基本的な死因は発表したものの、一人の遺体は汚染されていなかったことは伏せたのだろうと思われます。連載記事の作者は、東電本社ではなく、現場への直接取材で様々な情報を聞き出しています。

 

 しかしよくよく考えれば、東電が発表した死因だけでも、二人の死に不可解さを感じずにはおられませんが、津波にやられたということを頭から信じて疑っていなければ、疑念の一かけらも浮かんできません。連載記事の筆者も多分、そうだったのだろうと思います。わたしも連載記事を読むまでは、お二人の死そのものには全く何の疑念も感じていませんでした。

 

 門田隆将氏の『死の淵を見た男』{PHP}には、出入時の認証カード操作のトラブルから、地上の建物に閉じ込められた1、2号機の二人の作業員が、逃げ場のない状況下で津波に襲われ、洗濯機で攪拌されるような目に遭ったものの、奇跡的に助かったという体験談が紹介されていますが、地上ゆえか津波はすぐに引き始めたという。地下は津波が引いても水は地上のようには引かないはずです。しかし二人の死因は溺死ではない。奇々怪々。

 

 当時アメリカの専門機関からは爆発する前から4号機が危ないとの警告が日本政府に対して伝えられていましたが、原子炉内が空っぽの4号機が爆発するとは、日本では誰ひとり想像もしていませんでした。燃料棒を保管していた燃料プールも満水であり、水素爆発が起こる原因は存在しません。しかし爆発しました。政府事故調、国会事故調とも3号機爆発時の水素がダクトを通って4号機に入り、水素爆発を起こしたとの見解を示していますが、もしそうであるならば、なぜ4号機爆発では、放出源である3号機爆発時よりもはるかに高濃度の放射能を放出したのでしょうか。4号機爆発では、3基の爆発のうち、もっとも高濃度の放射能を放出しているのですよ。この事実を隠蔽しなければ、政府事故調、国会事故調の見解は、仮定としても成り立ちません。

 

 4号機爆発は、何か工作がなされなければ、起こりえない爆発であったことは明らかです。死亡した二人はその工作の何かを、偶々目撃してしまったのではないか。福島原発に津波が襲来(15:36)したのは、地震発生(14:46)から50分後のことです。他の全ての原子炉でも同様の点検が実施されたはずですが、死亡したのは4号機のこのお二人だけです。

 

 お二人の死の状況については、知識も情報も乏しい素人にはこれ以上の推測は困難ですが、お二人の死が非常に不可解なものであることは確かな事実だと思われます。そしてその死の不可解さは、4号機爆発の不可解さと密接に関連したものであることは言うまでもないでしょう。

 

 最大の問題は、4号機爆発後に初めて、大量の放射能が外部の広範囲な地域に一気に拡散したという事実を、官民、マスコミが一体となって隠蔽してきたことです。この事実を認めると、福島原発事故は津波による電源喪失が原因ではなく、意図的な工作によるものだという事実に直面せざるをえなくなるからです。少なくとも4号機の爆発は電源喪失によるものではないことは明々白々ですが、この事実すら誰も認めようとはしません。たとえ4号機1基だけでも人為的な工作によって爆発したと認めるならば、その工作者の特定に着手せざるをえなくなります。これは政治的な決断なしには不可能です。当時の菅政権はこの逆の決断をし、現場の電源復旧作業まで妨害した上に、人為的工作への疑いを生じさせるようなデータの徹底的な隠蔽を貫徹しました。

 

 しかし1号機、3号機、4号機の爆発時の敷地外への放出放射能については、当該地域の観測機関によって毎日1時間ごとに測った線量計測結果がWEB上に公開されていましたので、わたしのような素人でもその変化を確認することができました。しかし原子力規制委員会/規制庁の出現によって、放射線計測が一元化され、かつてのような詳細な線量計測体制は消滅してしまったので、今後は時々刻々と変わる放射線量の変化や核種から、爆発の状況を解析することは不可能になるはずです。

 

 ところで、前回紹介しましたCTBT高崎観測所は閉鎖されておらず、観測を継続していることが判明しました。閉鎖するどころか、CTBTは世界的に核爆発に対する監視体制を強化しているという。CTBT日本(高崎)の観測体制については次のPDFhttp://www.cpdnp.jp/pdf/150410Takasaki_report_April10.pdfに紹介されています。CTBTでは、人工核種のみならず天然核種も観測対象になっているとのこと。

 

 北朝鮮の核実験に関しても実験直後の1月6日から計測を続けていたらしく、その結果が軍縮・不拡散促進センターに公開されています。前号13号発行時点(2/27)では公開されていませんでしたので、前号13号発行後のことだと思われます。CTBT日本の解析結果では、「現時点で、NDC-2(日本原 子力研究開発機構)が監視している日本およびその他の IMS(国際監視制度) 観測所のデータから、 核爆発を裏付ける根拠は得られていない。」となっています。15日まで毎日観測結果が公開されていますが、結果は基本的には変化はありません。つまり、CTBTの観測結果では、北が核実験を実施したという事実はデータとしては確認されていないということです。

 

 一方、原子力規制委員会も北朝鮮の核実験結果について見解を公開していましたが、SPEEDIを使って、あたかも北の核実験で様々な放射性物質が放出されたかのような、重大な誤解を招くことを意図したような資料が公開されています。「一般的に、地下核実験の場合は大気中に放射性物質が放出されることは想定されません。 本試算は、航空における放射線モニタリング実施の際の飛行経路設定の参考情報として一 定の計算条件を仮定し拡散予測を行ったものであり、実際にこのような放射性物質が観測さ れているわけではありません。」との但し書きがついていますが、この資料は防衛省にも提出されたという。国の存亡にかかわりますので、防衛相は原子力規制委員会には依存すべきではありません。

 

 しかも前号13号公開前には、規制委員会は、「一般的に、地下核実験の場合は大気中に放射性物質が放出されることは想定されません」と言いながら、何の資料も提示せずに、北朝鮮が核実験を実施したことを追認するごく短い見解を公開していました。ところが、保存していた規制委員会の同じ資料のアドレスにアクセスしてビックリ。追認どころか、SPEEDIを使った、全く無意味な無駄な多数の資料に変わっていたからです。北の核実験が本当に核実験であったことを証明する証拠は何もないない中で、核実験による放射能放出データは何一つ把捉していないにもかかわらず、その元データそのものを勝手に想定(捏造)して、様々な核種の拡散状況を図解したデータを多数創作(捏造)して公開しています。

 

 放射能に関しては実測値以外はデータとは認めるな!と言いたい。SPEEDIの維持管理、運営に莫大な税金を投じることは即刻禁止せよ!

 

 CTBT日本(高崎観測所)が実測した北の核実験観測結果がすぐには公開されなかったのは、放射能に関する資料の公開は原子力規制委員会が一元管理して実施するので、それ以外の組織による公開が禁じられていたからかもしれません。もしそうであるならば、これほど危険なことはありません。CTBTは、北の核実験によるとされる地震の実測結果についても公開しており、北の過去の実験持の地震波の記録や実際の地震による地震波とも比較しながら、その特徴を解析しています。

 

 どちらが科学的で信頼のおけるデーターであり、分析資料であるかは一目瞭然です。政治家はこうした状況をご存知なのでしょうか。特殊な専門分野であるとはいえ、国の存亡に責任を負うべき政治家が分からない、知らないでは許されません。

 

 

2サイバーセキュリティ

 

 

 福島原発事故をめぐる不可解な事実を直視するならば、原発の安全性は自然災害への対応を厳しくするだけでは万全とはいえないという現実に直面せざるをえなくなります。というよりもむしろ、原発の安全性は、自然災害よりも、テロを含む人的な攻撃に対する体制が万全であるか否かによって決せられるといっても過言ではないはずです。原発テロも、空から爆撃するような監視可能な古典的な攻撃はほとんどないはずです。しかし日本ではその種の対策はほとんどなされておらず、その対応能力も非常に低い。

 

 そもそも原発の安全性すら、現在の原子力規制委員会/規制庁では担保できないのではないか。規制委員会のお墨付きを得て、2月26日に再稼働した関電の高浜原発4号機では3日後の2月29日、発電機が停止するトラブルが発生しました。3月9日には大津地裁が高浜原発3号機、4号機の運転差し止めの仮処分を決定。判決の10日前に4号機にトラブルが発生するとは、偶然にしては余りにも出来すぎですが、3号機、4号機は運転を停止しました。

 

 電源喪失がどれほど危険であるかは、日本中誰もが知っています。規制委員会は、運転開始後わずか3日後に停止した原子炉の発電設備を調査し、原因を突き止めたのでしょうか。その原因を突き止め、不可抗力の理由によるものであったと証明しないかぎり、再稼働を許可した規制委員会の判断に誤りがあったことになりますが、規制委員会は原因解明は電力会社に丸投げしているはずです。関電によると、過電流が流れて自動的に停止したとのことですが、コンピュータシステムへの外部操作によっても起こりうる事態ではないのでしょうか。

 

 実は2011年3.11の半年ほど前にも、福島原発で発電設備にトラブルがあり、一時的に発電が停止する事故がありました。東電も当時の保安院もその原因を特定できないまま、3.11を迎えました。また2010年7月にはイランの核施設がStuxnet(スタクスネット)と呼ばれるウイルスに感染していたことが9月に判明しました。(参照WSJ2010/9/27)イランの核施設の破壊を狙った高度な能力をもつこのウイルスは、米国とイスラエルが共同で作成したことが2012年にNYタイムズによって明らかにされました。日本ではこの重大なニュースはほとんど報道されていませんが、このウイルスは、イランでは核施設だけではなく、産業用コンピュータシステムにも侵入していたという。のみならずこのウイルスは、イランのコンピュータを経由して世界中に拡散したという。

 

 本来ならばこの事件を受けて、原発のみならず、鉄道や航空機などの産業用のコンピュータシステムのセキュリティ対策が強化されるべきはずでしたが、日本では官民いずれにおいても、目には見えない攻撃に対する対策はほとんどなされていません。サイバー攻撃防御の最大の要は、サイバー攻撃を攻撃だと見抜く能力の有無にありますが、東電をはじめ日本の電力会社や鉄道会社などにはそうした人材は皆無か皆無に近いはず。規制委員会などの規制当局にもその能力はありません。

 

 発火事故が相次いだボーイング787の事故でも、過電流が原因だといわれていますが、ユアサなどの日本企業をおとしめる目的の攻撃であることは明白です。さらに不可解なのは、787は世界中に納入されているにもかかわらず、日本納入機にだけ発火事故が相次いでいることです。今年の2月には北海道新幹線でも停電事故が発生しました。近年、電気系統の事故が多発していますが、これは単なる偶然ではないことは明らかです。

 

 しかも不可解なことには、航空機も新幹線も、飛行中や走行中には発火事故は発生していません。飛行中や走行中に事故が発生すると大惨事になりますので不幸中の幸いだともいえますが、停止中ならば、外部からの操作もやりやすい。稼働中ならばシステムの動きも高速で複雑ですので、その点でも外部からの侵入、操作は難しい。ただ飛行中の飛行機でも、機内に設置されているゲーム機を使うと、回路が共有されているからか、客席から飛行操縦をコントロールできるとの記事が、米誌WEB版に出ていました。普通の自動車でもパソコンを使って外部から操縦可能なことはすでに知られていますが、日本ではこの種の報道は非常に少ない。

 

 見ざる、言わざる、聞かざる状況に置かれている日本では、われわれ国民の知らない間にすでに原発のみならず、鉄道や航空機の一部はサイバー攻撃の対象になっているのではないかと思われます。787では日本だけが攻撃対象になっているのは、日本のサイバー防御能力が極度に低いからです。攻撃をしかけても攻撃だと特定することすらできないわけですから、これほど楽な標的はありません。自衛隊もその能力は極度に低く、米軍と比べると大人と赤ん坊ぐらいの差があると自ら認めています。日本の自衛隊は現代の最高の脅威といえる核攻撃とサイバー攻撃においては、その対応能力が極度に低い。それでも憲法9条に守られている日本は平和だと思い込んでいる日本国民が大半を占めていることには、暗然たる思いに襲われます。

 

 ロンドン五輪では膨大な数のサイバー攻撃を受けたそうですが、電力システムへの攻撃も含まれていたという。電力システムへの攻撃を未然に防いだのは、イギリス軍の情報部隊だったという。日本ではどこがその任務を担うのでしょうか。五輪という特別のイベントの問題としてではなく、日常的な日本の安全の問題として考えるべき問題であることは言うまでもありません。

 

 しかし問題は自衛隊だけではありません。原子力規制委員会/規制庁でも原発がコンピュータウイルスの攻撃を受けたとしても、その正体を見抜く能力はゼロです。見抜く能力がゼロだということは、その防御対策を立てる能力もゼロだということです。原子力規制委員会/規制庁は、日本全土に張り巡らされていた、高度で詳細な放射線観測システムを破壊しただけではなく、現代の新たな危機への対応能力もないとなれば、日本の核に対する安全はどこが担うのでしょうか。

 

 しかし規制委員会だけではありません。飛行機や鉄道の安全管理を担う、国交省もサイバー攻撃への対応能力は低い。つまり日本の省庁は全て、サイバー攻撃への対応能力が低い。これは、小中高という義務教育、準義務教育からIT教育を一貫して排除しつづけてきた、歴代政権による文部行政の結果です。加えて、IT教育の必要性を隠蔽しつづけてきた日本のマスコミの責任は政府以上に大きい。

 

 安倍政権は、東京五輪成功のために、にわかにサイバーセキュリティ強化に動き出していますが、サーバーセキュリティは、五輪イベント成功のためにだけではなく、日本国民の生命財産、日々の暮らしを守り、日本国土の安全保障の問題として考えるべきではないかと思われます。そのためにはTRONを開発した坂村健東大教授が提唱するように、日本の全国民が「読み、書き、そろばん」と並んでITの基本知識も最低限の基礎知識として身につけさせるIT教育の義務教育化を導入する必要がありますが、なぜか日本では未だにIT教育排除がつづいています。IT機器利用者増加教育だけはどんどん進んでいますが、その基本の仕組みすら学ぶ機会は日本の子供達には与えられていません。

 

 なお坂村健教授の講演が「産経アプリスタ」にて公開されていました。おそらく産経以外には公開されていないのではないかと思われます。坂村氏によればIoT(IT)政策にも「哲学」が必要だとのことです。

 

 なお福島原発事故が人為的な工作によるものだとの論評は、東電を免責するためのものではありません。原発に対しては、自然災害のみならず、人的攻撃などの原発の安全を脅かすあらゆる危険を防御する対策を立てておくべきでしたが、東電をはじめ日本の電力会社はそれを怠ってきました。仮に強化していたとしても、当時の菅官邸による異常な現場介入と妨害工作下では、どこまで有効に機能したかどうかは不明ですが、万全の対策を取っていたならば、原発事故被害の規模はこれほど拡大していなかったはずですので、東電の責任は重大です

 福島原発事故の真相は 

 久本福子著 『原発事故と巨大地震の正体

 

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